2014年10月30日

全国大会曲紹介

 日曜の演奏会もあるのだが、全国大会もいよいよ1ヶ月を切ってきた。スケジュールも出たことだし、今年の曲について書いてみたいと思う。

 今年の曲は課題曲がジョスカン・デ・プレ、自由曲はメンデルスゾーンとヒンデミット。3人とも歴史的な位置づけも違うし、様式的なものも全てが違うといって良いと思う。G2のレーガーを選択すれば、オールドイツとなったのだろうとは思うが、G2は男声の比重が大きかったのと、やはり24人で歌うには私たちには無理があると考えた。

 自由曲についてだが、1曲目はメンデルスゾーンの「狩の歌」。これが含まれる「野外で歌う6つの歌 Sechs Lieder im Freien zu singen op.59」は、第3曲の「緑の森よ(森への別れ)」が邦訳で歌われることも多かったようだ。(このことは作品41のなかの「ひばり」でも同様。)「野外で歌う」というタイトルの通り、無伴奏で野外で歌うことが想定され、内容も美しい自然や喜び、恋愛、悲しみなどがのびのびと歌われる。「狩の歌」は、狩を始める前の森の静けさから始まり、緊張感が高まっていき、後半は狩りに向かう心躍る心情が華やかに表現されている。読めば読むほど恋愛の詩に思えてくるようなところもあり(恋愛もハンティング、といえるかもしれない)、歌詞も音楽も飽きさせない。ドイツ語の早口言葉も大変面白い。(団員さんの絶句が聞こえそうだが・・・)

 打って変わって、ヒンデミット。この曲は彼の最晩年の作品であり、初演を指揮した1ヶ月後にヒンデミットは亡くなっている。彼は「完全な無調はあり得ない」と主張したが、斬新な和音や半音階を多用し独特の音楽を作り上げている。私たちが演奏する「ベネディクトゥス」は「フォーブルドンの形式で」というサブタイトルがつけられている。「フォーブルドン」とは14世紀頃の様式で、定旋律が最上声部にあり、6の和音が連続する和声進行のことで、デュファイが始めたとも言われているほどの古い様式。当然ヒンデミットなので、一筋縄ではいかないが、アルト以下のパートが奏でるフォーブルドン形式の音楽にソプラノが絡んでいく様は大変美しい。後半は完全なポリフォニー。
 音は現代の苦悩を表すような音なのに、利用されている形式は実は大変古いもの。3曲通すと、ヒンデミットの後にまたジョスカンが循環していくような気持ちになることがあるくらい。神を讃えることはもう2000年近く続いている。でも様々な戦争が絶え間なく起こっていることを知る現代の私たちは、昔のように手放しでただひたすらに神を讃えることはもうできないのではないか、神の恩寵を願いつつも無力感に苛まれる自分たちはどうしたらよいのか、、、などと考えてしまう音楽だ。

 さて、メンデルスゾーンとヒンデミットにはドイツ人である、という特徴とともに、ナチスに排斥された、という共通点がある。メンデルスゾーンは7歳の時にプロテスタントに改宗したユダヤ人であるが、第2次世界大戦時には彼の曲を演奏することはできず、有名なヴァイオリンコンチェルトは作曲者名を隠して演奏されたそうだ。ヒンデミットはドイツ人でありながらナチスの意に沿う保守的作品を作曲しなかったため、弾圧を受け、スイスやアメリカに亡命を余儀なくされた。

 メンデルスゾーンは1809年、ヒンデミットは1895年に生まれている。90年の間に音楽は大きく変わったことが感じられる今度の選曲。その違いも共通点も味わいつつ楽しんでいただけたら幸い。


posted by ゾリステンアンサンブルHP管理人 at 21:21| 島根 | ゾリステン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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